コーヒー

所要のため、午後から河原町三条界隈に出向く。

久しぶりのようなそうでないような、なんだか微妙な気分のまま、そういえば、と思い出したのがスマート珈琲店

まだ大学の構内をウロウロしていた頃、とあるプロジェクトでとてもお世話になっていた先生がいた。昭和ヒトケタ生まれの江戸っ子で、毎週京都にやってきていた。その先生の話は、研究内容はもとより昔の話から生活にまつわることから、とにかく全てが面白かった。先生は食べ物や持ち物にもこだわりというか愛着を持っている人で、昔からの馴染みのものをとても大事にしていた。

ある日、先生が少し遅めにプロジェクト室にやってきて小さな紙袋をくれた。「ちょっと寺町に寄ってたんだ。これどうぞ」と渡してくれたのが、スマート珈琲店のドリップパックだった。

今でこそ、京都のあちこちにある史跡やお店などに興味を持って眺めるようになったけれど、その頃はふらりふらりと京都で生活をしていただけで、あまりそうしたものに関心なく、そのお店が古くからあるものだとかどこにあるのだとかも、全く知らなかったのだ。いただいたコーヒーが美味しかったことと、先生は京都に来たらこのお店でコーヒーを飲むことを楽しみにしているのだなと思ったことだけは憶えている。

と、そんなことを、河原町三条から三条通を西に歩き、寺町通に差し掛かったところで思い出したのだ。時間がなかったのでお店でコーヒーを楽しむことはできなかったが、コーヒー豆を買って帰った。持っているだけで嬉しくなる、赤い小さな紙袋と良い香りのする袋。

今度は、お店でコーヒーをいただこう。