かつての場所へ

かつて、中学(の途中)から高校にかけて住んでいた場所に行った。小さな田舎の町で、町村合併により、当時の町の名は既にない。

高校を卒業すると同時に京都に出てきたので、そこに行くのは大学の長期の休みに帰省するときくらいだったし、両親がそこを離れてからはもう行く機会もなかった。だから、そこに行ったのは15年ぶりくらいだ。

海沿いの(だが背後には山が迫りくる)小さな漁師町(集落)は、景色も町並みも昔のままだった。昔眺めていた山も海も変わらなかった。

昔と違うと思ったのは、集落の大きさだ。くるっと回った町並みは、思っていたよりも小さかった。家から海に出るまでもっと時間がかかっていた気がするのに、海も川もすぐそばにあった。あの頃、私にとっての「外」は限られていたから(註:山奥に位置していたことや移動手段がなかったことや高校生の経済力のなさなどによって)、そこが生活のメインだった。そして、家は私にとって大きなものだったから、その家がある場所として、集落は大きなものとなっていたのかもしれない。

町を後にし、出身高校跡地にも行ってみた。ここに書いたとおり、私の卒業した高校はもうない。こちらは卒業後、一度も来たことがなかったので、20年ぶりくらいになる。

高校自体はなくなってしまったが、地元の中学校が校舎として利用しているため、学校自体は生きている。こちらも、3年間眺めていた景色はほとんど変わらなかった。職員玄関先の芝生には昔と変わらずニワゼキショウが小さな花を咲かせていた。

町と高校とを見て、切ない気分になるかと思ったがそうでもなく、私の過去の一部としてここはあったのだなということを感じただけだった。天気の良い日にここにこられて良かった。そして、相方の人にも、私がかつていたこの場所を実際に見てもらえて良かった。