帰省のシーズン

高校を卒業してからずっと、親元を離れて生活をしている。そうすると、たいていの人は盆暮れには親元に「帰る」ものだが、ここ数年帰っていない。

学生の頃は盆暮れに帰っていたけれど、正直なところ、あまり帰りたくはなかった。もともとがあまり家に居続けたくない方でもあったが、大学に入り独り暮らしに慣れるにつれ(註:必ずしも独りではない。途中弟と一緒に生活していたこともあった)、帰りたくない気持ちは強くなっていった。それでも休みに帰っていたのは、子どもとしての親(特に父)に対する義務というか責任のようなものだと思っていたからかもしれない。

家が居心地が悪くても、子どもの頃からの友達や知り合いがいるならば、その人たちに会えるだろうと思うかもしれない。しかし、私はここここに書いたように、あちこちを転々としてきたため、所謂幼馴染というものがいないし、土地に対する愛着もない。おまけに、親は今から10年近く前に東京に引っ越したため(註:なんの縁もゆかりもないところだ)、周囲に知っている人などますますいなくなってしまった。大学時代の友人たちが働いていたとしても、それこそ盆暮れにはそれぞれのふるさとに帰省している。

ということで、親元に戻っても何もすることはないし、親や弟たちの顔を見て話をしても、1〜2日あれば事足りる。それでも、父がいた頃は、忙しくない限りは帰省をし顔を見せていた。

数年前に父が亡くなってからは、盆暮れにわざわざ帰ることはなくなった。東京には仕事で年に1〜2回は行くことがあるから、その時に家に寄っている。家族のあり方としてサバサバしすぎだと思われるかもしれないが、私も母もそれでいいと思っている。盆暮れだからといって会う必要はなく、必要なときに会えばよいし、必要な時に呼んでもらえればいいのだから。

ちなみに、母は私よりもよほど合理的且つドライな人なので、わざわざ休みと時間を潰してまで、人が多い中をわざわざやって来る必要はないと言う(註:本心である。そうは言っても……ということはない)。

家のあり方はいろいろあっていい。家に対する思いもいろいろあっていい。帰省ラッシュのニュースを見ながら、そんなことをぼんやり思った。